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中国新聞 2020年1月15日 掲載

2020/01/16
Category: 参考記事

 ハチを恐れるのは人間も動物も同じ。蜂蜜製造販売のはなはな(福山市)が、養蜂で得たノウハウを基に、ハチの羽音とにおいを使った獣害対策に乗り出している。羽音とにおいを出す装置を開発し、薬剤の散布が限られる食品製造工場でのネズミ対策用などに提供。列車と動物の衝突事故の防止効果も期待される。

 直径5~6・5センチの塩化ビニール製の管に、2~4メートル間隔で穴を開け、オオスズメバチなど数種の羽音と体臭を再現したにおいを出す。ハチがいると勘違いさせ、動物を遠ざける効果を狙う。動物が装置に慣れないようにパソコンで遠隔操作し、犬やライオンの鳴き声、人の足音なども流す。

 同社は広島県東部で養蜂を営む。クマは蜂蜜目当てに巣箱を荒らす一方、イノシシは周囲の土を掘り起こす悪さをしないことに着目。「ハチに刺されるのが怖いのかも。大型のハチならクマも嫌がるはずだ」と清水秀幸社長(70)は、8年ほど前に開発を始めた。

 半年かけて羽音やにおいを発する試作品が完成。巣箱近くに設置すると効果ははっきり表れた。クマは巣箱を壊すことはおろか、周囲の木々から爪痕などの形跡もなくなった。

 ネズミ被害に悩むパン店の調理場でも実験し、装置と粘着シートを組み合わせたわなを仕掛けた。普段、粘着シートを避けて活動するネズミが羽音やにおいに驚いたのか、一晩で30匹以上シートにかかったという。

 清水社長は「使い方次第で動物を寄せ付けないだけでなく、捕獲にも使えると分かった」と話す。

 2018年12月からはJR東日本グループとも協力。シカと列車の衝突事故が年約200件起きるJR山田線(岩手県)で実証実験を行った。線路の両脇約500メートルにわたって装置を3カ月間置くと、動物との衝突はゼロになった。JR東日本盛岡支社は今後、山間部の路線で導入を検討しているという。

 はなはなは昨年、畜産業者や食肉加工場など30社以上とも契約。農業関係者や海外からも問い合わせがあるという。清水社長は「登山時のクマ対策などに応用する可能性を探りたい」と話している。 

2020年1月15日 中国新聞 掲載



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